443 売上の財務的特徴として知っておきたい10項目
2011-08-16 (火)
「財務体質を改善する」と聞くと、一般的には固定費や借入内容ということに
目がいきがちですが、それだけでは見直し完了とは言えません。
意外かもしれませんが、一番重要とも言えるのが、自社の売上の
財務的特徴を知ることなんです。
では、どのような尺度で売上の財務的特徴を評価するのかといいますと、
以下の10項目がその評価基準となります。
1)原価率:各商品ごとの原価率
→当然ですが、商品を販売するにあたっては、原価率の低いものが望ましいです。
また、一単位あたりは原価率が高い場合でも、その商品の購入量(販売量)を
増やすことで、原価率を下げられる場合もあります。
2)売上シェア率:自社の各商品が全社売上の中で占める割合
→これは、各商品の売上バランスを認識しておくことで、特定の商品に依存しない
売上バランスを実現できるよう、販売戦略を練るための必要データとなります。
あまりに特定の商品シェアが高い場合は、他の商品を育てる等の対策が必要です。
3)売上総利益シェア率:自社の各商品の売上総利益が全社売上総利益の中で占める割合
→これは、売上シェアだけに左右されず、自社の各商品における売上総利益のシェアを
確認しておく必要があります。
例えば、①販売価格も高いが原価率も高い商品と、②販売価格は安いが原価率が
低い商品を比較した場合、実際は①よりも②の方が売上総利益が大きいという
ケースも多々あります。
会社としては、②の商品を優先的に販売することで、利益率の高い経営が
行えるようになります。
4)購入金額:1回あたりの取引金額の大小(1単位)
→1つの商品をどれぐらいの販売価格で販売するのかを確認します。
大きい金額の場合は、販売頻度が少ない代わりに1度販売できた際の金額が大きく、
一方で、販売価格が少額な場合は、個数をさばかないといけません。
自社の売上計画を立てる上でも、商品単価×数量を把握しておくことが重要になります。
5)購入頻度:継続購入してもらえる商品かどうか(リピート率)
→販売した商品を継続購入してもらえるかどうかの頻度を確認します。
小売店や飲食店等であれば継続来店頻度等もチェック対象になります。
6)関連購買率:自社の特定商品を購入した後、他の商品も購入してもらえるかどうか。
→美容室であれば、カットだけでなくパーマやカラー等の技術販売に加え、店頭販売
している美容グッズの販売等の関連販売がどのぐらいできているかどうかを確認します。
7)季節指数:季節変動があるかどうか?(購入時期の差異)
→年間を通して、コンスタントに売れる商品なのか、もしくは特定の季節や月のみ
販売される商品なのかを確認し、自社商品の季節指数を見極めておきます。
8)債権回収サイト:自社で販売した商品の販売代金回収をどのように行うか?
→現金販売やクレジット販売の場合、債権管理に注力する必要性は薄れますが、
一方で、掛取引や手形取引のケースは、債権回収のリスクを抱える必要がありますので、
注意が必要です。
9)原価支払いサイト:自社で販売する商品原価の支払いサイトの確認
→自社で販売する商品の原価について、どれぐらいの支払サイトや支払い条件で
取引を行うことになっているかを確認します。
仮に原価率が低くても、支払いサイトが短い場合は、必要運転資金が生まれるケースも
ありますので、注意が必要です。
10)市場の影響:例年の動きには無い、その時だけの特別な需要や影響を考慮する
→例えば、サッカーのワールドカップの影響で、特定の月だけ居酒屋の売上がアップしたり、
新型インフルエンザの影響で、マスクの消費が一時的に伸びたりするようなケースを指します。
この特別需要を考慮せずに、今後の売上計画を考えると、予算と実績で大きなギャップを
生む要因となります。
これら上記10項目の内容を踏まえて、自社の商品内容を見直して、それぞれの課題となる
項目への対策を講じていきます。
例えば、
・季節変動が大きい会社であれば、売上の低い月に需要のある商品開発を行ったり、
・売上総利益をアップさせるために、原価率の低い商品を中心とした販売戦略を実施したり、
・関連購買が少ない会社であれば、クロスセルにつながるような関連購買戦略を行ったり、
といった対策を講じることができます。
単に、固定費だけを見直すだけでは、財務体質改善は実現しません。
明確な根拠のもとに立てられた売上予算を実現するには、売上の財務的特性を
理解することが、重要になります。
皆さんの会社でも、事業計画や今後の戦略を見直す際に、売上の財務的特性を
今一度見直してみてはいかがでしょうか。